筑波大学植松貞夫教授 最終講義の感想メモと記録
筑波大学大学院図書館情報メディア研究科植松貞夫教授の
最終講義を聴きに行ってきました。
http://klis.tsukuba.ac.jp/490.html
わたしは30分前くらいに会場に向かいましたが、すでに聴衆席はけっこう埋まっており
開始の16時30分には、会場は超満員。
ツイート実況OKとのことだったので、
講義内容をツイートしてる方もちらほら。
Togetterはこちら
http://togetter.com/li/456376
さて、自分のメモ書きがてら、簡単に記録をとってみましたので
ここにも載せてみたいと思います。
わたしの関心の赴くままに作成した記録なので、
記録した内容に偏りがある可能性があること、講義の内容を正確に聞き取ることを目的としたものではないことを
ご理解いただければと思います。
以下、講義メモです。
=========================================
人間が古来から建築物を作ってきた目的
- そのなかで安全、快適に過ごすため
- それを使って生活上の活動を展開するため
- 関係者の思い、情念を表現するため
- 自分の権力を示すため、大きい建物をつくる、など。
- 図書館だからといって、関係者の思いを表現するという事が全くないわけでない
- どんな図書館にしたいか、その想いが表れている
- ある場所にたてられる
- あるときに建てられる
- 時代の価値観、社会的要請から無縁ではいられない
- 関係者の情念と大いに関連する
- バブル期の建物を思い出すとわかりやすい
- ある姿形で建てられる
- 特定の形態でたてられる
- 建築は活動の器である
- 食器にも様々なかたちがあるように、活動が違えば、その建物も違ってくる
- その地域、目的ごとにふさわしい建物がある
建築は受注生産品
-
- 建築主(図書館)は管内での活動を想定する→コトのデザイン
- 図書館という新しい建物のなかでどういう姿が望ましいか
- 建築家(設計者)はふさわしい器を創造する→モノのデザイン
- 近代建築の理念=形態は機能に従う
- 建築主(図書館)は管内での活動を想定する→コトのデザイン
課題
求められるコトのデザイン
- 活動の将来像をイメージする
- そこで展開される人々の利用行動=使われ方
- さまざまな立場、価値観、図書館の人が参画し実現させたいことは人により異なる
- さまざまな図書館観を持つ人がいる
- 個人が住宅を建てる時でも、居間のデザインひとつとっても家族内でバラバラになる
- 管理職と、平の図書館員とでは図書館観も違う
- 開放的な図書館?セキリティの万全な図書館?
- ひとつの建物として実現していくのは容易ではない
- 将来のことをどのように考えていくのが、コトのデザインでは求められる
- 合意された目標が相互に矛盾することも
- ある基準のもとに適正な優先順位をつける
器が活動を制約・誘導する
- 環境決定論・建築決定論
- いまでは正しいこととは言われていない場合もある
- 建築設計者は誰もがある程度は信じているもの
- 環境心理学
- 建築や都市の物理的諸要因が人間の意識や行動にどのような影響を与えるかを科学的にとらえる
- 住宅の例
- 戦後住宅不足のなかで公営住宅を造る際、日本国中決まったタイプの家がたっていった
- さまざまな人が集まって協議したなかで下記のように間取りがきまった
- 食寝分離の生活(学生はなんで?と思うかもしれないが…笑)
- 就寝分離(親と子の寝る部屋を別にする)
ここまでの話の整理
- 活動があって器を作るという時代は長く続かなかった
- 器に制約された活動しか出来ない
- 図書館であれば、なんらかのサービスをやめて、この狭い建物でなんとかするという選択
- 将来はこんな活動になるだろうから…と活動の変化を許容する器を予想するのが建築学の目指すところ
建築計画顎:コトとモノをつなぐ
- 活動と器の不可分性
- 建築主はなかなか現状からジャンプできない
- いままで経験したことのあるコト、住んだことある家しか想像するのが難しい
- 建築主はなかなか現状からジャンプできない
- 器と活動の相互作用をみる
建築計画学とは
- 当該活動のあるべき姿、使い手の欲求、行動、意識、価値観などを対象として分析し、これからあるべき人間生活と物的環境の在り方の実現に向けて、人文社会、自然、工学など諸科学の知識と方法、造形活動などを総合する領域
- さまざまな科学の知識と方法を取り入れる
- 図書館がこんごどのような活動をすべきかというのをとらえて器と活動の双方の相互左様をみることを目指す
建築計画学の捉え方
- 新しい活動・生活のミョウガとなる事例を調査し捉えることで、そこへ向けてコトをデザインする
- それに向けてモノを作っていくのが良いと思われる
課題
- ある大学図書館の通常期の閲覧席の状況
- 試験機の同じ閲覧席。超満員
- では、適正な図書館の規模は?ほとんど理論はない
- 実際にはこういうもの
- 試験の時も全員座れるほうがいいのか?閑散期に席があまっているならもっと席が少なくていいのでは?
- 創れる器はひとつ。どうすればよいのか。
図書館の活動と器の変遷
- 図書館とは
- 図書館法によって法的な裏付け
1960年ごろまで:学生の勉強部屋時代
1960年頃から:貸出型図書館
- 図書館法の実体化
- 中小レポート
- 資料の提供の実現を図る動き
- 日野の活動が顕著
- 1970年市民の図書館
- 子どもたちの使える図書館を
- 街のいたるところに小さな図書館をつくる提言
- あえて席を作らず、貸出型の図書館を目指す
- 駅前など生きやすく、わかりやすい場所に設置
- 代表例:日野市立中央図書館
- 1973年開館
- 子どもの席には丸いテーブルがあるが大人用にはない
- 自習しようにも、席がない図書館
- 本がたくさん並んでいる。借りて帰るために自分で手に取れる本棚。
- ソファーやベンチが多い貸出型図書館
- 日野を見習う形で全国に図書館がつくられていった
- 代表例:日野市立中央図書館
1980年代から
- 社会の変化
- 大きなもの、見映えのするものをつくるように
- 70年代の好景気
- 自家用車の普及
- 雑誌・ビデオが急激に増加
- 図書館の変化
- コンピュータを用いたギョウムシステムの本格普及
- 書店に本が並ぶのと同時に図書館にも本がならぶ。貸し出しが増加。
- 大きな建物で、広い駐車場の得られる場所が好まれるように
- 例:埼玉県朝霞市立図書館
- ごちゃごちゃしていて、いろんなものがある
- 道路と段差がなくすぐはいれる
- 家族そろって来館し、たくさん本を借りて帰る姿も
- 見通しのよい館内、ゆったりとした家具配置
- 調査研究スペースがあり、ひとりでも座れる
- 児童スペースでは、こどもをいれるカートもある
- 例:福岡県甘田町図書館
- タタミの部屋
- 利用目的や気分にあわせたイス・スペース
- 公共図書館にも研究個室
- 古文書をみるための大きな机
- 例:佐賀県伊万里市図書館
- 図書館から本を持ってきて創作活動を出来るスペース
- 図書館でつくったものを展示するスペース
- 生涯学習が促進される場としての図書館
- コトがあってモノがついてくる
- 図書館でこういうことをしてもらおうという誘導が行われてきた
- 例:埼玉県朝霞市立図書館
同時に
住民の図書館利用行動の変化
- 「休日に家族そろって自家用車で大きな図書館へ」
- 恒例の男性利用者の増加
- 先日某図書館へ行った
- 駐車場は1時間しか無料にならない…1時間に1度出て、昼食も持っていく、という方もいるくらい
- 高齢者でも自家用車で来館している
- 高齢者は交通弱者…歩いて行ける場所に図書館をつくらばければならないといままでは言われていた
- 先日某図書館へ行った
デジタル情報ネットワーク社会・インターネット社会
- 情報コンテンツのマルチメディア化
- 時間と距離を超越した情報のやりとり
- 情報受発信の個人化(生産消費者)
- 情報取得能力による格差の解消が課題
- だれも中間者がいなくて情報をやりとり出来ている
- これまでの人類の文明ではなかった
- これが図書館の存在を危うくしていると言われている
図書館は絶滅危惧種か
推移
- 図書館が生き残るために、様々な図書館像を提案
- 図書館による町村ルネサンス:Lプラン21
- 図書館の基本理念
- これからの図書館像
- 課題解決支援の充実が特徴的
- これからの図書館は課題解決支援型図書館
- しかし、実際はこういった機能は利用が少ない
頼りになる図書館のために
- 相談しやすい環境をつくることが必要
- 従来の一般的なレファレンスデスク
- 偉そうな職員
- 後ろにたくさんの本
- 利用者が「お願いする」立場?
- 上下関係があるような環境
- スウェーデンのレファレンスデスク
- 先進的な萌芽例。日本でも出来ないかと思った。
- 例;新潟市立中央図書館のインフォメーションデスク
- ふたりで同一の画面を見ながら相談できる
- 適度な距離感を持てる「でっぱりのある机」
- 気持ちよく相談できることを目指す
- 例:明治大学の和泉図書館
- リサーチアシスタント
- すりガラスで囲まれたスペースで相談できる
- スウェーデンのひとに聞かれて困る話を出来る相談ブースを参考に
- リサーチアシスタント
人的サービスの充実には
- 職員の単純反復作業の軽減
- セルフサービス化
- 図書館員が頭脳労働に集中できるようにする
- ひたすらバーコードを読むといった業務
- 例:北海道石狩市図書館
- 自動貸し出し機を3台設置
- 海外では、なんでこんなに自動返却機にこだわるのかってくらいこだわっている…
- 海外の様々な自動返却装置の例をずらずらとご紹介!
- こんなすごいのを開発するなら、職員を雇ったほうがよい?笑
- 例:北海道石狩市図書館
- 職員の職場環境の改善
- こんな環境で働きたい、というのがあればぜひ
- フィンランドでは、職員のための快適なラウンジが
- 日本では見られない環境
- こういう場所をつくっていきたい
- 職員のためのトレーニングジムがあるところも
- フィンランドでは、職員のための快適なラウンジが
- 日本とは職員の環境の水準に相当の差がある
- こんな環境で働きたい、というのがあればぜひ
よりよい環境・図書館とは
- 暖炉のある図書館の写真。自分の家のよう
- 本棚がずらっとならび、これでもかというぐらい図書を並べてある図書館の写真
- やはりこういった図書館が人を惹きつけるという面も
- インターネットの利用と図書の利用を併用できる図書館
さいごに
- ストックフォルムの中央図書館の写真を紹介
- 円形の閲覧室が有名
- ハンバーガーの匂いがする…
- 壁一面に本棚が
- ドアの引き手がアダムとイヴ!
- フランス国立国会図書館ミッテラン館
- 応募したが、出来たものは「これでいいのか…」という図書館
- 「誰がこんな図書館を思いつくだろうか」
=================================
おわり。
感想メモのようなひとりごと
とってもおもしろかったです。
最終講義に参加出来てわたしはホントに幸運です。
なんかうまく書けないけど、この大学に入って本当に良かったと思いました。
…ホントにただの感想メモになってしまった(笑)