図書館系勉強会KLC「近代日本の出版流通と「読書国民」の誕生 「図書館史を勉強したい」answer編」
id:humotty-21さんのブログに掲載されていた図書館系勉強会の今年度からの記録です。
図書館系勉強会@つくば、3学期の部です。
3学期は毎週水曜日3限の開催です。
2013年2月20日はid:min2-flyさんが
「近代日本の出版流通と「読書国民」の誕生 「図書館史を勉強したい」answer編」という題目で
発表してくださいました!
今回の発表が実は、図書館系勉強会KLCの発表は最終回でした。
今回も同様に、個人の主観の入った調査による発表であること、またそれが他人が聞き取れる範囲での記録になっていることをご理解いただきつつ、ご覧いただければと思います。
です。よろしくお願いいたします。
参考資料
図書・図書館史:近代日本の出版流通環境の整備と読書国民の誕生 Timeline | Preceden
id:min2-flyさんが作成した、近代日本の出版流通に関する出来事をまとめた年表です
発表の記録
前回の勉強会での発表
俺たちは登りはじめたばかりだ…この長い図書館史坂を
- もともとの問題意識
- なぜ図書館史を学ぶかがわからない
- 相互の関係・全体の流れを教科書はあまり無い
- 「資料、場所、人の変遷とその相互関係、通底するものを事例を検証しつつ論じる」ことが出来ないか?
- 図書館版の『銃・病原菌・鉄』が欲しい!
- これらを明確にすることで、「図書館史不要論」がなくなるのでは?
図書館史を学ぶ意義について
- いまの図書館の成立について
- いまの図書館がつくられたのはここ200年くらい
- しかし、「図書館の伝統」というものを論じがち
- いまある図書館を客観視するためには…
- なぜこのような図書館になったのか知る
- 歴史の背景
- 例)アレクサンドリア図書館
- 巻き物しかなかった図書館
- 「背表紙がたくさん並んでる図書館」というのが出来たのは最近のこと
- 例)鎖の図書
- 開架で自由に手にとれる本が並ぶ図書館というのが出来たのは最近のこと
- ゲームの世界でよくみる図書館の描写は、当時の歴史的におかしいものが多い?
- 例)アレクサンドリア図書館
- 図書館ってこういうものだよね、という価値観を正しく持てるかどうか
- 図書館史を勉強することで身に着けることが出来る
図書史を学ぶ意義について
- 実は図書館史を学ぶより図書史を学ぶほうが大切?
- メディアの歴史と図書館の歴史は分けて取り上げられがち
- 図書館史を学ぶうえで、図書史は切り離せられない
- 年表などを活用しながら、同時に論じられるようになるのが目標
これからやってみようと思っている図書・図書館史の授業
- メディアの変遷と、図書館の歴史を同時に扱えないか考えている
- ちなみに授業の第一回は「ことば・文字の発明と図書館」
- 佐藤「地雷かな…」
- ちなみに授業の第一回は「ことば・文字の発明と図書館」
- 図書・図書館史で扱っている内容は半分くらいは「公文書館史」?
- だが「図書・図書館史」と言っている分、現代の考えだなあという感じがする
今日の発表:近代日本の出版流通と「読書国民」
概要
- 明治から昭和までにいまの日本の出版流通システムは完成
- なぜいまのような出版流通システムになったのか
- 出版直後の本を読むという習慣を確立する必要があった
- 教科書ではあまりこのことは取り上げられていない
- 当時は世界最高のシステムと言われていた
- 日本独自に発展したもの
- なぜこんなシステムが成立しえたのか
- 図書館との関係は?
- なぜいまのような出版流通システムになったのか
近世から現代
- 江戸時代も既に出版流通はある程度確立
- 近代の出版流通
- 雑誌と書籍が同ルートで流通
- 日本の特徴
- 雑誌屋で本を売っているというのがおかしい?→あとで詳しく
- 活版印刷になる
- 中央の一部から全国へ出版物が流通するシステムに
- 読者の拡大
- 雑誌と書籍が同ルートで流通
これらの変化の要因は?
産業革命
- 活版印刷の採用
- 鉄道網の発達
- 明治初期…日本で鉄道が普及し始める
- 今日刷ったものが明日届くということが実現
- 新聞は全国ネットワークができたことで、東京の出版社が地方に進出しはじめる
- 新聞を売る業者が雑誌の取次もするようになる
- それまでは雑誌はメジャーな読み物ではなかったが、戦争を機に雑誌が普及しはじめる
雑誌取次の成立
- 新聞・雑誌は鉄道輸送費が優遇される
- 一定以上でさらに割引がある
- もともと出版(製造)・書店(小売)に比べ数が少ない
- 大手は4社くらい
- 東京発。全国発送網が実現
- いまのような出版流通システムが確立
図書の出版流通システムは?
- 江戸時代のころからたいして変わっていない状態
- 読者の傾向
- 新聞・雑誌の読者はこの頃すでに普及していうr
- 小説ブームの発生
- 図書はそこまで普及していない
- 全国に一律に届くシステムはまだない
- 本の無い地域がわりとあった
関東大震災と円本ブームによる変化
- 関東大震災によって図書流通網は完全に機能停止
- 出版者や本屋も被災
- 講談社が生き残っていたのが大きな要因
- 円本とは
- 大正末〜昭和初頭に流行した廉価な全集もの
- 一冊1円くらい(いまの5000円前後)
- この当時の中央公論が80銭くらい
- この時点では文学というものにはあまり人々は触れていない
- 講談本が流通しているくらい
- 予約購読で毎月配本される→雑誌に似ている
- 雑誌と同じ流通ルートで売られる
- ますます雑誌ルートで図書が売られるようになる
- 日本出版史上最大の事件といわれれている
- 全国で売れまくっていた
- 本についてもだいたいこれを読んでおくべき、という価値観が生まれる
- 大衆への文学の普及
- 全集は何年たっても価値は変わらない
- 売れ残ったものが安く売られる
- 雑誌と異なり人々の書棚に残り続ける
- 世代が変わっても手に取ってもらえる
- このことによって、図書と人々の関わり方が変わってくる
太平洋戦争と総動員体制
- 戦後の日配分割
- 出版者と小売りにとっては、分割はメリットがあまりなかった
- 結果、トーハンとニッパンの2社+αにしか結局別れなかった
- この頃に、出版流通システムは確立する
- 寡占状態の大手から、地方へばら撒く、というやりかた
- もとは雑誌を売っていた店でも図書を売っているというのが日本の大きな特徴
読書国民の誕生
- 近代出版流通が生んだもの
- 中央メディアの中央流通体制
- 喋っている言葉は地方でバラバラでも、読むこと・書くことは出来る
- 自分たちの住んでいる国「日本」について認識し始める
- 日本全体の現象に関心を持つようになる
- 読者投稿欄などを通して自分も参加することが出来る
- 雑誌など活字メディアを介して、日本人であるという事を認識する
- ヨーロッパで起こった現象と同じ現象
- 「創造の共同体」
- ナショナリズムの発生
- 出版メディアを通して同じ言語を読む、同じ現象を認識する
- 「創造の共同体」
- 政府の読書国民の認識
- 文字を読める人々が同じメディアを読んでいるという事が必要
- 読書の有効性への政府の認識
- 新聞読書による啓蒙
- 青年再教育
- 読書は使いようによっては有用だと認識し始める
- 政府が読書の普及をまじめに考え始める
- 読書国民になれないものもいた
- 中央メディアの中央流通体制
…というわけで今回はここまで。
min2fly先生の次回作にご期待ください。
勉強会の様子
id:min2-fly先生の図書館史にみなさん興味津々でした。
発表もとても良いところで終わってしまったので、続きが気になります。
今後の勉強会の予定
今回の発表で、図書館系勉強会KLCは最終回でした。
みなさまありがとうございました。
さて、今後の予定ですが、
3月13日に図書館系勉強会KLC主催で、LT大会を行う予定です。
近日中に詳細を掲載予定ですので、ぜひご参加・ご発表いただけると嬉しいです!