ブログつくったカパ

仮のブログ名を直すタイミングを逃したまま、図書館の雇用まわりの話とか、公共図書館とまちづくりの話をしています。

図書館系勉強会KLC 「図書館史を勉強したい!教科書分析編」

id:humotty-21さんのブログに掲載されていた図書館系勉強会の今年度からの記録です。

今回は記録つきです!わーい!

2012年6月5日のテーマは「図書館史を勉強したい!教科書分析編」でした。

担当はかたつむりは電子図書館の夢をみるかでおなじみのid:min2-flyさんです。わーい!

昨年度同様

今回も同様に、個人の主観の入った調査による発表であること、またそれが他人が聞き取れる範囲での記録になっていることをご理解いただきつつ、ご覧いただければと思います。

です。よろしくお願いいたします。

はじめに:今日の概要

・図書館史を「これから」勉強するために、いままさにしている、という話
・今日の概要
 ・図書館史をまじめに勉強するために、まず教科書を読んでみよう
  ・主要な教科書を全部読んでみたが、足りていないのではと思われる部分があったので、そのへんの話をする

なぜいま図書館史なのか

・遠因:2009年に川崎良孝先生の講演を聴いて興味を持った
  ・それまで図書館史は興味が無くて授業などもとっていなかった
  ・講演を聴いて、自分の固定概念が覆されるようなおもしろさを感じた
  ・たとえば、メルヴィル・デューイの人柄や半生が思っていたのと全然ちがった
  ・図書館史ってもしかしておもしろいんじゃないか?と思い始める

・近因:関西文脈の会での図書館史がおもしろそう
  ・図書館史勉強会@関西 関西文脈の会がおもしろそう!
  ・図書館史に興味が湧く
  ・ゆくゆくは自分も参加したいと思ったりなんだり

・図書館史関連本も近年熱い!
  ・2011年におもしろそうな本が立て続けに出版されたスライド6の本

図書館を届ける―アメリカ公共図書館における館外サービスの発展

図書館を届ける―アメリカ公共図書館における館外サービスの発展

越境する書物―変容する読書環境のなかで

越境する書物―変容する読書環境のなかで

新たな図書館・図書館史研究―批判的図書館史研究を中心にして

新たな図書館・図書館史研究―批判的図書館史研究を中心にして

 
・これらの活動をみているうちに、図書館史についてもっと勉強したいと思うようになる
・これまでも自分の興味の範囲で図書館史に関係した本は読んできた
  ・しかし、基本を抑えて本を読んだり体系だって学んだ経験がない
・図書館史や本の歴史を体系立てて勉強するべきなのではないかとずっと考えていた
・基礎を学んだことがないので、基礎が何かもわからない…
  ⇒司書資格の「図書館史」の教科書を読んでみたら基礎が把握できるのではないか?
・そこで今回「図書・図書館史」の教科書を読んでみようと考えに至る

図書・図書館史とは?

・司書科目のひとつで1単位分
・選択科目なのでとらなくても司書にはなれる
・旧科目では「図書及び図書館史」という名前だった
文科省の定義は、旧科目より新科目のほうがメディア史を含んだ内容になっている

・実はカリキュラム改定のたびに削除されかかっている科目
  ・図書館文化史研究会等の働きかけで存続してきた
・教科書も数社から出版されており、開講している大学もそこそこあるよう

・最も多くの大学で使われている教科書を読めば図書館史の基礎を学べるのではないか
  ⇒調査1:最も使われている「図書・図書館史」の教科書は?へ


調査1:最も使われている「図書・図書館史」の教科書は?

各大学の指定教科書を調査してみる

・多くの大学で採用されている教科書はきっといい教科書なのではないか
・各大学等での教科書採用状況を調査する

調査方法

・『日本の図書館情報学教育』2005年版を使用
  ・各大学等での開設科目・担当教員が一覧できる優れもの
  ・しかし、更新頻度が遅く最新が2005年版のため、これを使用する

日本の図書館情報学教育 2005

日本の図書館情報学教育 2005

・「図書・図書館史」開講大学を特定する
・Web上でのシラバス公開状況を確認する
  ・公開していれば⇒開講状況を調べる⇒教科書は何が使われているか調べる

調査結果

開講大学について
・図書・図書館史を開講しているのは65大学(2012)
・そのうち、教科書の指定が確認されたのは33大学
・残りの内訳は以下の通り
  ・22大学はプリントと参考資料を使用している
  ・6大学は記述がみられなかった
  ・2大学は未定
  ・1大学は参考書のみ
  ・1大学は記述なし

教科書について
・指定教科書は全10種類
・うち2大学以上で指定されているのは4冊
  ・そのうち同じ先生が指定しているものがあるので実質3冊
  ⇒上位3冊を実際にみてみた

使われている教科書番付
  1位 JLA図書館情報学テキストシリーズ 図書及び図書館史
     ・14大学で使用

図書及び図書館史 (JLA図書館情報学テキストシリーズ 2-12)

図書及び図書館史 (JLA図書館情報学テキストシリーズ 2-12)

  2位 樹村房新図書館学シリーズ 図書及び図書館史
     ・10大学で使用

図書及び図書館史 (新・図書館学シリーズ (12))

図書及び図書館史 (新・図書館学シリーズ (12))

  3位東京書籍 新現代図書館学講座 図書及び図書館史
     ・2大学で使用

図書及び図書館史 (新 現代図書館学講座)

図書及び図書館史 (新 現代図書館学講座)

・この3冊を読めば図書館史の基礎はばっちりなはずだ!
 ⇒というわけで読んでみた


調査2:各教科書の内容は?

調査方法

・図書・図書館史で使われている教科書は概ね上記の3冊で網羅している
・それらの教科書+新版・旧版合わせて5種類の内容を比較してみた
・記述の内容・各章の分量・順序・執筆者などからそれぞれの特徴を明らかにすることを試みる

調査結果

・最初に結論
  ・各教科書共通で絶対おさえているところはある
   ・たとえば、グーテンベルクのあたりは絶対書いてある
  ・しかし配分・構成はかなりはっきりした差がある

・調査結果1:東京書籍版
  ・構成がかなり均等に配分されている
   ・各古代から近現代までは比較的均等に扱っている
  ・書き手が8人で構成されている。

・調査結果2:JLA旧版
  ・メディア史・世界史・日本史に大別されている
  ・記録メディア(図書史)にあたる部分と図書館史はわけて書いているのが特徴
  ・あまり海外の話はしていない
  ・25ユニットのなかで近現代の図書館史の話が12ユニット
   ・約半分は近現代の図書館史のはなし。
  ・あまり体系的に海外の歴史がわかるというかんじではない
  
・調査結果3:JLA新版
  ・14大学で採用されている一番よく使われている教科書
  ・メディア史の量が多い
  ・日本近現代公共図書館が厚く、海外史が薄いのが特徴
  ・書き手が若い!

・調査結果4:樹村房旧版
  ・10大学で採用されている(第2位)
  ・西洋史・中国史・日本史に3分されている
  ・日本の図書館史は西洋の図書館をモデルにしているので西洋の図書館史を多めに記述しているとの説明書きがある

・調査結果5:樹村房新版
  ・5月に発売されたばかりなので現在採用している大学はない
  ・旧版の特徴をさらに増しているかんじ
  ・他の教科書では地域別に記述されているが、この教科書では時代区分を優先して記述されている
  ・中国・インド・イスラム圏の記述が厚い
  ・この教科書は唯一近現代史よりも古代・中世・近世の記述が多い
  ・他の教科書にはない特徴がちらほら
   ・wikipediaについての記述がある
   ・webアーカイブに関する記述がある
   ・「まとめ」がある

調査2のまとめ

グーテンベルクやボストン公共図書館、中小レポートなど…絶対に抑えているポイントは絶対ある
・海外の話や時代の話など、各教科書によって配分はかなり自由度が高い
・どのへんを勉強したいかで、選択する教科書を考える必要がある
・このなかではJLA新版と樹村房新旧版がオススメ

「図書・図書館史」の教科書を読んで気が付いたこと

「図書・図書館史」の意義

・体系的に学べた気がしない
・教科書で取り上げられている事実の意義がわからない
  ・なぜ図書館史上でこれが必要なのかわからない…
  ・たとえば、パピルスに関する記述は意義がわかりやすかった
   ・パピルスの歴史
   ・パピルスから羊皮紙へと発展の必要
   ・さらに冊子体が普及する要因になった「聖書」について
   ・冊子体が発展した理由など
  ・このへんの歴史は今日の冊子体の歴史を知るうえで重要になっていると思われる
・個別の事実記述はあるが、相互の関係、全体の流れが提示されない
 ⇒なぜこの事実が重要なのかわからない

・カリキュラム改訂のたびに図書館史がいらないのではといわれるのはこのへんが原因か
  ・暗記科目ではないかといわれてしまっている?
・樹村房は最終章にまとめっぽいのがあるので割とそのへんを抑えているのでは

いまの教科書に足りないものはなんなのか

・谷航さんのマクロ図書館史が大変参考になる
http://toshokanshi-w.blogspot.jp/2011/02/blog-post.html
  ・記述メディアの変遷から図書館史を概観している
  ・全体として図書館に関わるものはどのように影響し合ってきたのか説明している

・教科書でもこの観点を取り入れるべきなのではないか
・図書館史版『銃・病原菌・鉄』が必要?
  ・この本では世界の発展の要因などについてそれぞれの要素や影響関係について説明されている

銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎

銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎

・図書館史でもこの観点が取り入れられるべきではないか
  ・実はもうこの手の本がありそうな気もしている
  ・書物史研究等でありそう
・図書館史版のマクロな視点が教科書にあれば、体系だった学習が出来るのではないか

今後の勉強の方向性

・図書館史における『銃・病原菌・鉄』みたいな本がないか探してみる
  ・きっとある
  ・実際の授業でははこういう内容になっている気がする
・図書館史教育調査の継続
  ・シラバスの内容や参考書の調査を続けたい
・図書館史教育に関連した異分野の勉強をしてみたい
  ・他の専門職等の分野では分野史はどのように扱われているのか

俺たちは登りはじめたばかりだ…この長い図書館史坂を

その後の勉強会の様子

他の分野の「〜〜史」はどんなのがあるのか

学芸員は「博物館概論」のなかで博物館学史という学習項目が設定されているよう
・医学分野ではやはり医学史なるものがあるもよう

樹村房の古代中国に関する記述における図書館はメディア史が多いのか?

・古代から中世史をやらないのであれば、図書館史とメディア史をわけることは出来る
・しかし、古代から中世史をやろうとすると、メディア史と図書館史を分けることは難しい

・筑波の図書館史はメディア史っぽいかんじ
・国大法人の「図書」をうけるひとはとっておいたほうがいいかも?
・世界史や日本史の知識がないとかなり厳しい内容でもある。そのへんどういう理解になっているのか。
・そういう意味では、新版樹村房は世界史がよくわかっていない人でもなんとか学べる内容になっている

(ここからSISTの書き方から他の大学での書誌事項の書き方、日本目録規則の話で白熱しだす一同)

次回以降の勉強会の予定

以上今回の勉強会の記録と様子でしたー。
来週は@nagasouさんが「大学職員系の就職活動」について発表してくださいます!
ご興味のある方はお気軽にご参加くださいませー

銃・病原菌・鉄は積読になっているのでこれを機に読もうと思いました…。
それではまた来週ノシ